創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―
著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦
執筆時期:1999~2000年
牛角と祝祭・その民族系譜:161頁
第二章 エンキ神と「メ」の職能(4)
「イナンナとエンキ」は、
エンキ神の専有物であった「メ me 」が
エリドゥ市から他の地方へ伝播されていったことの挿話を語る。
ウルク市の女神イナンナがエンキ神から
「メ me 」を入手しようともくろみ、エリドゥを訪ね、
エンキ神がもうけた酒宴で同神の酔いが回って朦朧としている間に
「メ me 」をエンキ神から掠め取り、ウルク市へ船に乗せて持ち帰った。
この挿話の意義をジャン・ポテロは
「エンキやエリドゥから メ me が奪われたという意味ではなく、
イナンナとウルクもまたこの時以来エリドゥ同様
メ me を所有し利用するになったことを意味している」
といっている。
つまり、
エリドゥの神殿の権威が
他の都市にも波及したことを示しているのであり、
各都市によって守護神は変わっても
権威を象徴する神殿の概念が踏襲されていることの証左となる。
また、
エリドゥの神殿の信仰に従い奉献が行われたのである。
森林がなく木材を輸入しなければ入手できない
南メソポタミア地方にとって、
北メソポタミアでのように高床式神殿を作るためには、
木材は不適当であっただろう。
当然大量に作り得る煉瓦を積み上げた建物を
神殿とすることに転換されたことは明らかで、
大規模化も可能となったのである。
階段は神殿が巨大な土塁の上に造られるようになったために
必要になったのではない。
高床式神殿にあった階段が
「天への門」であるという観念を尊重しているのであり、
ジックラトの主要な特徴となっているのである。
エリドゥ文化が南メソポタミア全域へ広がった
証左の代表的要素である。
ARPACHIYAH1976
『参考』
Tell Arpachiyah (Iraq).
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《Key Word》
イナンナとエンキ
エンキ神
エリドゥ市
ウルク市
ジャン・ポテロ
ジックラト
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