2010年1月5日火曜日

読者はすべて「難しいほう」を求めている

 『出典』言語復原史学会・加治木義博:大学院講義録02:12頁

 では私たちの歴史の本は「娯楽商品」にはならないのか?。

 そんなことはない。

 人いきれに悩んだ頭が一番求めている静寂は、

 自分の室で静かに読書する孤独に勝るものはない。

 球場やライブ会場の人ごみはもちろん、往復の乗り物の混雑や、

 自動車でも信号待ちや停滞にイライラがつのるが、

 我が家で読む本にはそんな不快感はない。

 それにもまして、歴史には現実を忘れさせるロマンがある。

 夢中にさせる謎と謎解きが、さらに人を熱中させる。

 重要なのはここである。

 いま私たちが考えている主題は、

 「読者が何を難しいと感じるのか」ということだった。

 ところが謎というのは文字を変えれば「難解」なもののことである。

 たとえ漢字が難しくて、言葉づかいも古臭くて、

 辞書を引いてやっと読めるような文章でも、

 そこに謎のままのものがなければ、

 意味がわかって理解できる。

 ところが「謎」とは、解明されずに、

 不明のまま残っているもののことである。

 読者は、その「謎」にこそ興味があるのである。

 その謎も簡単に解けるようなものでは物足らない。

 難解なものほど興味がある。

 巨大な謎が先ずあって、その一角が崩れたと思うと、

 また次々に新たな謎が出現するようなものを求めている。

 難かしいことが嫌われているのではなく、

 「難しいほう」を喜ぶのである。

 おわかりのように「難しさ」にも種類があるのだ。

 『参考』

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 小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書"
 『メソポタミア世界』
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