『出典』言語復原史学会・加治木義博:大学院講義録03:31・32頁
古代の沖縄は、東アジアで流通していた貝の貨幣「宝貝」の、
世界一の大産地だったので、たいへん富み栄えていた宝の国だった。
その「宝貝」は中国を筆頭にアジアの全域に、そしてアフリカや南米にまで、
船で大量に積み出され、戻り船はその国々の物産を積んでかえってきた。
それを仕入れにくる船がまた四方から集まってくる。
それもまた近隣からだけではない。
はるかなヨーロッパや太平洋の島々からもやってきていた。
だから小さな島にも都会があって、港にはさまざまな船が、にぎやかに並び、
荷物を積みおろしする人々が雑踏していて活気にみちあふれていた。
クレーンや車が動いているだけの今の港のほうがずっと淋しいほど、
生き活きとした経済の一大中心地だったのである。
ある日、天に向かって指さしているような、
りっぱな柱をたてた大きな船が港についた。
そこからエーノス(ギリシャ人)たちがぞろぞろ降りてきて、
島長(おさ)の家へいった。
日が暮れてもなにか話しあっていたが、くらくなってから船にもどった。
島の子供たちは家にもどったが、
火をかこんで食事をしながら父母は変わった出来ごとを語りあった。
しかしエーノスたちが何をしにきたのかはわからなかった。
だが朝になると真相が判った。
エーノスたちは島長の家の女の子
アガフィ(愛)ちやんを連れにきたのだった。
港へいってみるともう船はいなかった。
そしてその日から可愛かったアガフィちゃんのすがたも消えた。
子供たちは何かもの悲しくて淋しい想いに涙ぐんだが、
日がたつにつれて少しずつ忘れていった。
それはボンヤリした夢の中の出来事といっしょに、
うすれて次第に消えていった。
けれどアガフィの母は、それを忘れることはなかった。
彼女の胸はいつも痛みつづけた。
その痛みは今はじまったことではない。
そのいとし子が生まれてさいしょにその産毛(うぶげ)をみたとき
彼女の胸は大きな鼓動をうった。
それは人びとの誰ともちがって、黄色い金色に輝いていた。
「この子は話にきく白子(しらこ)だわ…?」
彼女の胸は不安に、はげしく高鳴ったのだった。
両親の心からのねがいは、
そのふしぎな髪の毛の色がその子のふしあわせのもとにならないよう、
幸福な子にそだつようにということだった。
でもアガフィはすくすくと成長した。
はじめはイジ悪な子供たちが髪の毛の色がうすいというので
「アワ(淡)フィ」とアダ名をつけていじめたが、
年のわりに大(おお)がらで頭のいい彼女はへいきで、
それに子供たちと遠くまで遊びあるいてもどこにいるかが一と目でわかった。
日にかがやく花のようなきれいな髪のいろが、
あたりを照らすように、
よくめだったから、
いつかみんなのボスのような存在になっていた。
『参考』
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小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書"
『メソポタミア世界』
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