2015年5月22日金曜日

『古事記』の御名方神

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 創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―

 執筆時期:1999~2000年

 牛角と祝祭・その民族系譜:880~883頁

 第14章 牛頭と鹿頭 

 『古事記』の御名方神

  建御名方神が史料に登場する『古事記』を第一とする。

 そこでは同神は大国主神の御子として物語られる。

 その部分を日本古典文学大系から転載する。

  (大国主神が)是(ここ)に亦白しけらく、

 「亦我が子、建御名方神有り、此れを除きて無し。とまをしき。

  如此白す間に、其の建御名方神、千引(ちびき)の石(いわ)を

  手末(たなすゑ)に擎(ささ)げて来て、

 「誰ぞ我が国に来て、忍び忍びに如此物言ふ。
 
  然らば力競べ為(せ)む。

  故、我先に其の御手を取らむ。」と言ひき。

 故、其の御手を取らしむれば、

 即ち立氷(たちひ)に取り成し、

 亦剣刃(つるぎば)に取り成しつ。

 故爾に懼(おそ)りて退(しぞ)き居(を)りき。

 爾に其の建御名方神の手を取らむと

 乞ひ帰して取りたまへば、若葦を取るが如(ごと)、

 つかみ批(ひし)ぎて投げ離ちたまへば、

 即ち逃げ去(い)にき。故、追ひ往きて、

 科野(しなのの)国の州羽(すは)の海に迫め到りて、

 殺さむとしたまひし時、建御名方神白しけらく、

 「恐(かしこ)し。

  我(あ)をな殺したまひそ。

  此の地(ところ)を除(お)きては、

  他処(あだしところ)に行かじ。

  亦我が父、大国主神の命(みこと)に違(たが)はじ。

  八重事代主神の言(こと)に違はじ。

  此の葦原中国は天つ神の御子の命の

  隨(まにま)に献(たてまつ)らむ。」とまをしき。

  この神話のために山陰地方から東北地方の日本海側の

 神社の信仰と歴史を覆い隠したり、

 故意に曲げたりして解からなくした面がある。

 以下の考察はそのような隠された部分を明らかにする。

 ここで、建御名方神は大国主神の御子として物語られる。

 しかし、

 『古事記』はその誕生について直接的には何も説明していない。

 上記の挿話は突如として語られている感じがある。

 大国主神のもう一人の御子とされる

 事代主神については別のところで、

 母の名を神屋盾比売命と記している。

 「先代旧事本紀」の地神本紀に

 「次に高志沼河姫を娶りて一男を生む。

  児建御名方神、信濃国諏方郡諏方神社に坐す」とあり、

 その母が高志の沼河姫であることが示唆される。

 古事記では大国主神の別称である八千矛神と

 「高志国の沼河比売」との妻婚いの歌と、

 その嫡后須勢理比売の嫉妬の歌謡が長く記載されている。

 ここで重要なのは、その父名が「八千矛神」であることである。

 実際同神名を主祭神とする八剣神社(諏訪市小和田宿)が

 諏訪大社上社本宮の地に鎮座している。

 高志沼河姫神は、新潟県西頚城郡内であった

 糸魚川市一之宮に奴奈川神社が鎮座するように

 姫川に産するヒスイ(硬玉)を採っていた

 この地方の支配的氏族の姫と考えられているが、

 諏訪地方では茅野市本町鬼場の御産石神社に祀られている。

 「諏訪神社明細帳」は同神が

 高志国から鹿に乗って大門峠を越えて来たと語っている。

 八剣神社は諏訪湖が冬に結氷し、前面に張りめぐらされると、

 その水圧で氷が盛上るように裂け氷脈ができる「御神渡り」を

 神の表徴として拝観する神事を掌っている神社として知られる。

 先に転載した建御名方神と御雷神の決闘(力競べ)の場面で

 後者が手を掴むとその手が「即ち立氷に取り成し」とあるのは

 『古事記』の著者がこの「御神渡り」を

 知っていたからではないかと推測させる。

《参考》

 ARPACHIYAH 1976
 高床式神殿、牛頭、空白の布幕、幕と婦人、マルタ十字紋等
 (アルパチア遺跡出土の碗形土器に描かれている) 
 

 牛頭を象った神社建築の棟飾部

 本生図と踊子像のある石柱

 Tell Arpachiyah (Iraq)
 Tell Arpachiyah (Iraq)    
 ハラフ期の土器について
 ハブール川
 ハブール川(ハブル川、カブル川、Khabur、Habor
、Habur、Chabur、アラム語:ܚܒܘܪ, クルド語:Çemê Xabûr, アラビア語:نهر الخابور Bahr al-Chabur
 ARPACHIYAH 1976
 高床式神殿
 牛頭を象った神社建築の棟飾部
 神社のルーツ
 鳥居のルーツ

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